こけの中の小さなクマ− けんび鏡を使った微生物の観察 − |
こけの中にすむクマムシという微生物の観察
けんび鏡を使った研究テーマを探していたら、偶然インターネットで、クマムシというものすごい生物がいることを知った。それも身近なこけの中にいるというので、調べたいと思った。
(1) 本や、インターネットで調べる。
(2) 実際に自分でこけを採取して、観察する。
けんび鏡(
ビクセン学習用生物顕微鏡 ミクロショット500)
パソコン用のカメラ(
アイオーデータ USB−CAMCHAT)
シャーレ(ペットボトルの底)
スライドグラス
スポイト
白色発光ダイオードを使った
けんび鏡の照明そうち
けんび鏡の
接眼レンズの部分にパソコン用のカメラを付け、パソコンの画面で見ることができるようにする。
カメラについてきたソフトを使って、写真やビデオでさつえいする。
(1) クマムシとは
身の回りのこけなど、どこにでもいる土壌(どじょう)微生物。熊のようにずんぐりした体つきからクマムシの名がつけられた。
ゆっくり、のそのそ歩くため緩足(かんぽ)動物門という独立した門に分類される。
足が8本の節足動物(外骨格をもつ、昆虫やクモの類)にちかい生物。だっぴしながら大きくなる。
かんそう状態になると、体をまるめて「たる」のような姿になり、生活作用を停止することができる。
かんそう状態では、151℃という高温や−253℃という低温、6000気圧(生物が生きられない環境)という状きょうにもたえられるらしい。すごい!
世界中で約800種、日本で約30種みつかっている。
(2) クマムシの採取と観察
@身近な場所3か所からこけを採取
家のへいのまわりのこけ 近所のトンネルのコンクリートのこけ 近所の公園のコンクリートのこけAこけをシャーレに入れ、水にひたしてしばらく放置
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Bシャーレのそこにたまった水を1てき、スライドグラスにとってけんび鏡(倍率250倍)で観察
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Cクマムシ発見!
水の中で生きる生き物なので、はじめはじめじめしたところのこけの中をさがしていた。そのような場所には、いろいろな微生物がたくさんいたが、クマムシはみつからなかった。
公園で採取したこけの中から2種類のクマムシをみつけることができた。しめったこけよりも、白っぽくかわいたこけからの方がみつかりやすいということがわかった。
クマムシの名前を確かめるために、クマムシなどの微生物にくわしい東京女子医科大学の野田泰一(のだひろくに)先生に、パソコンで撮ったビデオを
電子メールで送って見てもらったところ、「オニクマムシ」と「トゲクマムシの一種」であることがわかった。
オニクマムシの方がたくさんみつけることができた。卵をもったものや、だっぴした後の
ぬけがらなどもみつかった。
写真をクリックすると動画を見ることができます(WindowsMediaVideo)
(3) かんそう状態の実験
スライドグラスの水がじょうはつするのとほとんど同時に、黒い豆つぶのようなかたまり(かんそう状態)になって動きが止まる。
水を加えると、数分〜数十分かけてだんだんともとのかたちにもどり、ふたたび動き出す。
オニクマムシの変化のようす( 動画 WindowsMediaVideo)
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トゲクマムシの変化のようす( 動画 WindowsMediaVideo)
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(4) ベールマン装置について
一てきの水の中にはたくさんの微生物や砂などがあり、その中からクマムシを探すのは大変だった。だから一番はじめにクマムシを見つけた時はとびあがってよろこんだ。
研究を進めていくうちに、クマムシのような土の中の微生物をあつめるためには「ベールマン装置」というものを使うとよいことを知った。これは、こけや土の上から強い光を当てて、光をきらう微生物だけをあつめる装置だ。
本にのっているような道具(ろうとやビーカーなど)がなかったので、ペットボトルの頭の部分を2つ組み合わせて似たような装置を作り、これを使ってクマムシをかんたんに、たくさんあつめることができるようになった。
卓人流ベールマン装置 ペットボトルの口の部分をろうとのような形に切り取る。これを2つ作る。 一方の口のところにガーゼをキャップの輪で止める。もう一方にはキャップをつける。 ガーゼをつけた方にこけを入れ、これを内側にして2つを重ねる。 ←上から光を当てて2〜3時間で、下のキャップの中に微生物が集まる。
(5) その他の微生物の映像
水の中には、さまざまな微生物がすばしっこく行ったり来たりしている。その様子は、まるで学校の運動会。
←小さいのでたまにしかみつからないが、二本のしっぽがついたようなすがたや、ちょろちょろした動きはクマムシの次にかわいい。写真をクリックすると動画を見ることができます(WindowsMediaVideo)
念願のクマムシを2種類も見つけることができた。せかせかと歩く
オニクマムシに対して、
トゲクマムシの歩き方は、とてもゆっくりで本物の熊のようだった。
かんそう状態の変化は本当にすごいと思ったが、とにかくどちらのクマムシもとてもかわいくて、家族中がくぎづけになった。その中でも僕はトゲクマムシの方が、かっこよくて好きだ。
ペットとして飼うにはちょっと小さすぎるので、紙ねん土で
もけいを作って飾ることにした。
オリジナルのイラスト(表題の絵)もかいた。これで
Tシャツを作った。
学校にもっていく
自由研究のまとめは、全部ワープロで書いた。
観察のようすをできるだけくわしく残すため、
記録文(夏休みの作文「こけの中の小さなクマ」)を書いた。
動物の顕微鏡観察 (井上勤監修 地人書館) − いろいろな微生物の集め方や観察方法、プレパラートの作り方について、図や写真を使ってわかりやすく書かれている本。
微生物図鑑 − 東京都下水道局のホームページにある。いろいろな微生物を動画で見ることができる。
Site
CXJ11255 − 野田泰一先生のページ。クマムシの学名リストや、簡単な採集・観察方法など。
クマムシゲノムプロジェクト − クマムシに関する海外や国内のリンクがたくさん紹介されている。
文/絵/写真 : 卓人
Technical Advisor : 卓人の父